俳文学会東京研究例会
例会プログラム
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第439回
2017年12月16日(土)14:30〜17:00
聖心女子大学1号館204教室
第29回テーマ研究  芭蕉真蹟集の今後−『芭蕉全図譜』25年を前に−  
                                 司会 深沢 眞二氏

講演  芭蕉真蹟研究史の展望                      安保 博史 氏

【要旨】
 江戸時代以来の芭蕉真蹟集成の試みを概観し、『芭蕉全図譜』(岩波書店、平成5年)所収「総説 芭蕉真蹟物の世界」、今栄蔵氏「芭蕉の関防印『山昨木』の本物と偽物」(『連歌俳諧研究』99号、平成12年)、同氏「芭蕉の真蹟とその模造品」(『山寺芭蕉記念館紀要』6号、平成13年)などの到達点を確認した上で、平成8年に発見された自筆本『奥の細道』真贋判定時の学界の対応を検証し、より精密化する近年の芭蕉真蹟研究の最前線の諸相を踏まえながら、今後の研究の方向性や課題を展望する。

資料紹介  暁台旧蔵「芭蕉翁筆伊勢之吟」一幅               清登 典子 氏

講演  芭蕉真跡に対する所感−晩年を中心に−     立教大学名誉教授  加藤 定彦 氏

438回
2017年10月21日(土)14:30〜17:00
江東区芭蕉記念館
●研究発表
  文暁著『花屋日記』再考   /  眞杉 泰輝 氏

【要 旨】
 『花屋日記』は、肥後国正教寺第十世藁井文暁によって書かれた芭蕉伝記『芭蕉翁反古文(上下)』(文化八年自序)の後刷・改題本の書名である。この作品の上巻は日記体で、芭蕉の発病から葬送までを記し、そこに集まった弟子達との最後の俳遊の様子が描かれる。一方、下巻には弟子たちの書簡や遺品整理についての記述を掲載している。あたかも、芭蕉の直弟子の記した作品かのように見えるが、其角「芭蕉翁終焉記」・支考『笈日記』・路通『芭蕉翁行状記』などをもとに書かれたということからこの作品は「偽書」と断じられ、俳文学研究の俎上に上げられる機会が少なかった。何かと神格化されがちな芭蕉の終焉の様子を人間一般のそれとして描いた本作に対する評価を文暁の人生とともに再考していきたい。

●研究発表
  初期俳諧と『論語』古注・新注の関係について / 吉田 健一 氏

【要 旨】
 『論語』は日本の思想界のみならず文学にも大きな影響を及ぼしている。初期俳諧においても松永貞徳の「酒の朋遠方よりやきくの宿」(『崑山集』)をはじめ『論語』を取り込んだ句が見られる。それにとどまらず、『類舩集』などの俳諧辞書や俳論・俳文の中にも『論語』を取り入れた表現が見られる。ただ、一口に『論語』と言っても、室町から江戸初期にかけて、我が国ではその解釈に大きな変化が見られた。それは何晏の『集解』に代表される古注に依拠した読み方から朱熹の『集注』すなわち新注による読み方への転換である。初期俳諧の世界で活躍した人々は、そのどちらにも触れる機会があった。たとえば、『滑稽太平記』には「何晏集解に曰く」という記述があるし、また『俳諧蒙求』には「この人を、論語憲問十四朱子の注に・・・」と記されている。今回の研究発表においては、『論語』の読み方の転換と初期俳諧における『論語』の引用との関係を見ていきたい。

437回
2017年9月16日(土)14:30〜17:00
江東区芭蕉記念館
●研究発表
  連歌古注釈における句の評価の位置づけ−宗祇門流を中心に−  / 浅井 美峰 氏

【要 旨】
 連歌には、作者自身の自注を持つ作品や、成立とほとんど同時代に注釈が付された作品が存在する。新日本古典文学大系の『竹林抄』で、それらの「古注釈」を批判的に享受し作品理解に役立てているように、「古注釈」は作品の鑑賞に資するものである。また、古注釈の中には句の良し悪し等の評価をしている注が見られ、当時の連歌師がどのような点を重視していたかを見るのに有益である。例えば、心敬は『芝草』で「粉骨」等とその句に自身が注力したことを示し、宗祇も七賢や自身の句に評を加えた作品を多く残している。
 本発表では、宗祇門流の連歌師である宗長や宗牧の古注を中心に、そこでの句の評価がどのような意味を持ち、どのように連歌史の上に位置づけられるかを見ていきたい。


●研究発表
  松井家旧蔵文書から見る凉袋と素輪  / 紅林 健志 氏  

【要 旨】
 群馬県立文書館が現在所蔵する松井家旧蔵文書は、近世期に前橋宿の本陣八田屋を営んだ松井家に伝存した文書群である。この松井家の当主には、凉袋(建部綾足)の有力門人であった素輪がいる。松井家の凉袋関連資料は、文書館の所有となる以前、すでに本多夏彦「三日月素輪」(『上毛及上毛人』連載)および『凉袋伝の新研究』(本多夏彦著作刊行会)で紹介され、『建部綾足全集』(国書刊行会)においても一部が使用されている。しかし、それらで触れられていない資料もあるので、本発表では、松井家旧蔵文書における凉袋関係資料の概要を述べ、凉袋と素輪の交流、凉袋の活動等についていくつかの知見を述べる。

第436回
2017年7月15日(土)14:30〜17:00
聖心女子大学1号館204教室
第28回テーマ研究  「国際俳句とフランス20世紀詩における革新
          ―金子美都子氏の講演を中心に―」             
                              司会 塚越 義幸 氏
  
●国際俳句の概要と可能性                    東 聖子 氏

【要 旨】
 21世初頭のいま、国際俳句は欧州・北米・南米・アフリカ・アジア・その他の多くの国々で、創作されている。それぞれの国々や民族の伝統的な詩の歴史と言語構造の特質のうえに、成立している。その短詩型文学としての魅力はどこにあるのだろう。また現代的な詩的表現として、グローバルな近未来への可能性を考究する。


●講演 フランス20世紀詩と俳句―ジャポニズムから前衛へ―  金子 美都子 氏  

【要 旨】
 日本の短詩型文学の一つである俳句は、日露戦争勃発の前年に来日したフランス人青年哲学者ポール=ルイ・クーシューによって発見され、フランスに発信された。俳句は、20世紀のフランスにどのような興味と関心から選び取られ、また、どのようなインパクトを与えたのか。俳句の詩学に向き合ったフランス詩人・社会を通して、フランス近代における「詩」の革新を追う。

435回
2017年6月17日(土)14:30〜17:00
江東区芭蕉記念館
●研究発表
  連歌式目の制定と付合技法の発展
    〜『文和千句』と『紫野千句』の四季の句を中心に〜 / ボニー・マックルーア 氏

【要 旨】
 連歌式目は、百韻全体のバランスと多様性を確保する上に、あるテーマから離れる必要性を生じさせることによって、付合技法の発展を促進したと考えられる。式目の制定が具体的にどのような新しい付合技法を生み出したかについて、式目制定の頃に詠まれた作品である『文和千句』と『紫野千句』を見ると手掛かりが見つかる。特に、これらの作品の四季の句を見ると、季節を転じるための付合工夫をさまざま用いていることがわかる。例えば、過去の思い・未来の想像を使って季節を転じた付合や、ある季節の景物を別の季節の景物の見立てた付合などがある。このような付合パターンの中には、良基以前の連歌作品には例が見つからないものがある。このように、良基・救済時代の連歌では季節を転じる場合の付合技法がより複雑、より多様になるということは、式目の制定により、決まったところで季節を転じる必要が生じたということが関わっていると考えられる。

●研究発表
  「恋俳諧」という文芸 / 永田 英理 氏  

【要 旨】
 「恋俳諧」とは、連句の各句すべてに恋を詠み込んだ特殊な俳諧であり、連歌の恋百韻に倣ったものとされている。正統な連句に比べて遊戯性の強い文芸ではあるが、初期俳諧における流行をはじめ、『みなしぐり』の其角・嵐雪による両吟、享保期における沾州や淡々による試み、綾足の「恋百韵」など、俳諧史においてしばしば確認することができる。 
 蕉風俳諧における恋句の研究がさまざまなかたちでなされてきたのに対し、恋俳諧で詠じられてきた句については、これまでほとんど検証されてこなかった。そこで、現在確認することができた作品を対象に、恋俳諧においてどのような「恋」が詠じられてきたのかをみてゆくことにしたい。その結果、西鶴の矢数俳諧や蕉風俳諧における恋句の特徴もまた、あらたに浮かび上がってくるだろう。

434回
2017年5月20日(土)14:30〜17:00
江東区芭蕉記念館
●研究発表
 元禄二年の芭蕉の「初雪」二句について   / 深沢眞二氏
【要 旨】
 尾形仂先生は1995年6月17日の本研究会において、「芭蕉発句雑考」と題して「初雪に兎の皮の髭つくれ」句等の解釈に新見を示された。それはのちに『俳句の可能性』所収の「俳句の読み」という論考となり、尾形先生の解は定説となりつつある。22年後の今、「初雪に」句について、とくに「兎の皮」のもつ象徴的な意味を考慮する必要があるという視点から、新たな解釈を提示したい。また、同じ元禄2年の芭蕉発句「初雪やいつ大仏の柱立」との関わりについても考察する。

●輪  講
 『続の原』発句の部・第13回 / 深沢了子氏 
【夏の部−8〜12番】

第433回
2017年4月15日(土)14:30〜17:00
江東区芭蕉記念館
●研究発表
 『夜半亭蕪村句集』収載句調査報告 / 清登典子氏
【要 旨】
 『夜半亭蕪村句集』については、すでに昨年の東京例会公開講座において、春夏部までの調査に基づいて他句集との関係や位置づけについての見通しを中間報告として述べさせていただいた。その後、秋冬部も含む収載句についての一応の調査を終えることができたので、今回はその調査から見えてきた収載句の情報を提示するとともに、先に示した他句集との関係や位置づけについての検証を行いたいと思う。

●輪  講
 『続の原』発句の部・第12回 / 大城悦子氏 
【夏の部−3〜7番】

第432回
2016年12月17日(土)14:30〜17:30
聖心女子大学1号館204教室
第27回テーマ研究 「芭蕉 真蹟・偽筆・写しの判定 ―新出資料をめぐって―」

1「芭蕉の墨蹟を考える−「野ざらし」の関連資料から−」  小林 孔 氏

 芭蕉の墨蹟を判定する場合に、A氏が自信をもって真蹟と判断しても、B氏がその鑑定を不服に思うことはしばしばありえよう。ひとことで言えば、A氏とB氏の判断(考え方)の基準が相違しているからである。私は、真蹟と判断されたものでも、揮毫(成立)年次の考証に誤りがあれば、もう一度、真贋を白紙に戻して再検討をすべきかと考える。これも判断の基準のひとつである。そうしなければ、芭蕉の筆蹟はいつまでも正しい位置付けがなされぬまま、感性の領域から解放されることは難しいし、文字を体系的に判定する目が養われることはまずありえない。
 そこで、玉城司氏が昨年の俳文学会、および学会誌上で公表された新出句文をとりあげ、原本未見ではあるものの、その揮毫年次に再考を促すべく、私なりの解答を用意し、考証過程を明らかにしながら、新出句文の紙面に現れた芭蕉の真贋に迫ってみたい。
 
2「大垣市の「特別出品芭蕉新資料」の検討」  玉城 司氏

 新出芭蕉資料の真贋についてオープンに議論することは、今後の芭蕉研究にとって有意義である。今年は1993年刊『芭蕉全図譜』後23年、この間、自筆本「奥の細道」ほか20点ほどの芭蕉新資料が紹介されている。それらの内、俳文学会67回全国大会(於大垣市)において小林孔氏が真蹟と認定紹介された元禄六年の芭蕉書簡、玉城が紹介した懐紙等について私見を述べ、小林氏におうかがいしたい。

3 討論「なぜ芭蕉資料について判定する必要があるのか」                                                          ファシリテーター 田中 善信氏

第431回
2016年11月19日(土)14:30〜17:00
江東区芭蕉記念館
●研究発表
  「座の文芸における連歌撰集の位置づけ―心敬と宗祇の場合−」/ 松本 麻子 氏

【要 旨】
 連歌撰集や連歌師の句集等にある発句・付合は、百韻や千句から採られたものである、と何となく考えられてきた。例えば『新撰菟玖波集』を調査すると、入集句の大半は元の資料が不明であるが、これらの句は散逸した又は未発見の資料から抜き出されたものであると理解されている。しかし、果たしてそう言えるのかを検証したい。心敬は自身の句集に、参加した百韻・千句の句を採り入れることはほとんどなかった。宗祇の姿勢はどうか。座の文芸における撰集の位置づけを、心敬と宗祇の立場から考察したい。

●研究発表 伊達慶邦一座の七種連歌をめぐって / 綿拔 豊昭 氏  

【要 旨】
 仙台藩伊達家では、元和年間から毎年一月七日に連歌を行い、それは江戸時代最後の慶応四年まで継続された。「七草粥」の信仰を連歌に取り入れたものと考えられ、「七種連歌」と称される。伊達慶邦は仙台藩最後の藩主である。文事では「宮城百人一首」の編纂を命じたことで知られる。年頭行事としての連歌にもかかわらず、伊達慶邦は実際に句を詠じたと思われる。本発表で、幕末期の七種連歌がどのようなものであったかを明らかにしたい。

第430回
2016年9月17日(土)14:30〜17:00
江東区芭蕉記念館
●研究発表
 明治三十年前後に於ける鷗外の俳句作風―子規派との交流の中で― / 根本文子氏
【要 旨】
 鷗外の俳句作品はあまり知られていない。とはいえ、子規が「明治に於ける俳句集の嚆矢」と序する日本派(子規派)の『新俳句』(明治31・3・14)に明治の俳人の一人として取り上げられる以上、その作風を追及する意味はあるだろう。俳人としての鷗外は子規との交流における三つの段階を踏んで進化している。その第一は明治二十九年一月三日、子規庵に設けられた「発句始」の会に参加したことで、その句座は期せずして子規、鷗外、漱石という明治の文豪三人が同席する会となった。第二は同年一月三十一日に鷗外が創刊した文芸誌『めさまし草』に掲載する日本派の俳句をめぐる交流、第三は明治三十一年の鷗外と子規に共通する、草花への強い執着である。このたびの発表は以上の三つの階段を踏まえつつ鷗外俳句の進化の跡をたどり、鷗外の「鷗外漁史とは誰ぞ」に於ける子規評価を含めて二人の影響関係を考える。

●輪  講
 『続の原』発句の部・第11回 / 吉田健一氏 司会:松本麻子氏
【春の部−56番〜58番 夏の部−1〜2番】
  
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